2009年4月9日木曜日

安易な増員は危険・・

試験に合格すれば与えられるもの・・・それが資格や免許なんですが、どの職業でも試験では図りきれない力というのが必要になってきますよね。
教員の指導力とか、医師の手術技術とか。
弁護士だってそういった力が多く必要になってくるからこそ法科大学院で試験的でない実践的な力を付けなくてはいけないのに、それが行われていないなんて。。。
早期改善が必要ですね。

◆法科大学院/所期の目的達成へ努力を(2009年4月9日 世界日報)

 財団法人大学基準協会は、二○○八年度に評価対象となった法科大学院十四校のうち九校について、教育内容などで基準を満たさないため「不適合」だと公表した。最近の別の機関による評価を含めると、これで問題ありとされた法科大学院は計十九校となった。

偏向したカリキュラム
 今回、「不適合」とされたのは、東北学院、白鴎、日本、神奈川、関東学院、名城、大阪学院、甲南、関西の各大学。司法試験の受験対策に集中しない教育内容が求められているのに、試験対策に偏ったカリキュラムが取られていた。また学生の成績が厳格に評価されていなかったり、専任教員が不足しているところもあった。
 政府は、一○年までに司法試験合格者を年間三千人に増やす目標を立てているが、安易な増員は禁物だ。まず法科大学院の質を高める取り組みをしなければいけない。そのためには、統合再編も視野に入れるべきだ。
 また今回、同協会は、一昨年に発覚した植村栄治・元慶応大法科大学院教授による試験問題漏洩疑惑をめぐって、再発防止策が十分に履行されていないと判断し、慶大に来年度以降も引き続き状況報告を行うよう求めた。新司法試験の出題担当の考査委員だった同教授が試験対策の勉強会を開き、実際の出題と重なる論点を説明していた問題で、同大は釈明を行い再発防止策の履行を約束していただけに、残念である。
 法科大学院の新設は、弁護士を増やし国民に身近な司法を実施することだけが目的ではない。二〇〇〇年に始まった司法改革では、国際的な弁護士の育成の必要性が論議され、わが国には複雑な経済事犯などに対応できる優秀な弁護士が少なく、その養成が焦眉の急だという意見で一致した。にもかかわらず、慶大のような有名大学で司法試験対策の小手先の勉強会を良しとするようなことが発覚すると、司法改革の形骸化が進んでいるのではと懸念せざるを得ない。実態を精査する必要がある。
 もう一つの眼目は、法曹界に多様な人材を送り込むためのロースクールの役割だった。今日、知的財産権、医療過誤、建築瑕疵紛争、労働関係など、専門的知見を要する事件、訴訟は枚挙にいとまがない。これらに対処するには、社会人や他学部出身者の入学を促し、カリキュラムも多彩な実務内容を取り入れることが要請されていた。
 しかし、各地の法科大学院でそれに該当する入学者の数は減少しており、政府が社会人を三割にするという目標実現は難しい状況だ。技術系出身者が法曹資格を取得することを容易にするカリキュラムを取り入れるなどの工夫が必要だろう。

法曹人としての倫理を
 一方、法曹人口の増加に伴い、法曹人としてのあるべき姿を明確にし、それを目的とした教育を強化すべきである。特に弁護士はこれまでその数を抑えられ、大きな特権が与えられ活動してきた。だが、今日、弁護士業務のビジネス化が顕著になってきているだけに、法曹人としての倫理を体現する必要がある。法科大学院は、そのための教育機関でもあるはずだ。